梅田のスナック（かわいい）

靴をスリッパにはきかえると、一門寺は襖を開け、プーンを率いて騒ぞうしくまぶしい室内へ入って行った。一段高くなっている畳の部屋には、舞台の方から今ブーンが立っているところまでテーブルが二列に並んでいて、百人ばかりがあぐらをかいて座っており、折から歌い始めた女の奇妙なしわがれ声に合わせて、リズミカルに手拍子を打っていた。唄っている女のうしろには、スカート状のズポンをはいた伴奏者の一団が控えている。尺八奏者が一人立ったまま、三味線弾きが二人、三味線を膝にのせて腰掛けにかけ、一見して唄い手ふうの若い男が二人けばけばしい大柄のユカタを着て、舞台の後方で体を揺さぶり、音楽に手拍子を合わせている。一方、着物に足袋姿で赤い帯をしめた四人の女の踊り手が、舞台の両手に分かれて完壁な対称形で、往ったり来たり回ったり、屈みこんではまた伸びる。おばこ、なんぼにな―るじゅうな―な―つゆリーいを……女のかん高い声は、急に低くなると湧きあがる拍手の波のなかに消え、お客はリフレインの最初のふぞろいな一節を、てんでにつっかえながら口ずさむのだった。ズー・センセイ己入口に近い方のテープルにいた二人の男が、一門寺が入って来るとすばやく見つけて、激しく手をふった。

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